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Z世代に嫌われる広告表現とプロモーションの落とし穴

Web広告にテレビCM、新聞広告に電車の中吊り広告まで、私たちの生活のあらゆるところで目にする「広告」。広告は販売促進のための最も一般的な手法ですが、近年消費の主役となりつつあるZ世代の間では広告自体にネガティブなイメージを抱いている人が多いことをご存知でしょうか?
単純に目にする機会が多いために「うっとうしい」「興味がない」と敬遠されている広告もありますが、中にはターゲットを見誤った広告表現やプロモーション手法により、炎上や不買運動につながって企業のブランド力を低下させてしまうという最悪のケースも。せっかく企業や商品の魅力を広めたくて広告を出していても、Z世代の価値観や感覚に合わないために逆効果になってしまってはもったいないですよね。
とはいえ「嫌い」というのはあくまで感覚的なもの。もちろん人によってそのラインは異なります。本コラムではZ世代である私自身の主観や実感も含め、Z世代に嫌われるプロモーションの具体例やその原因を紐解き、彼らに愛される施策のヒントを探ります。
01
広告の視点から見るZ世代の感性
多様性と個性を尊重
ボーダーレスなグローバル化社会に生きるZ世代は多様性に敏感。世の中には多様なバックグラウンドや価値観、性的志向を持つ人が存在することを、幼少期からの教育や自分の経験を経て認識しています。そのため広告表現においても勝手な決めつけや配慮に欠けた表現が入っていると、Z世代にとって一気に嫌悪を感じるものとなってしまいます。
また多様性を尊重するのと同様、「自分自身の個性や価値観も尊重されるものである」という感覚を持っているのもZ世代の特徴。逆にいうと多様性を受容しているからこそ、自分自身が拒否・否定されることにも敏感であるといえます。そのため世間一般が決めた「良い」とされる基準から自分が弾かれているように感じることにも拒否感を示す傾向があります。
広告はターゲットを定めてそこに刺さる表現を考える分、どうしてもターゲット層に対して画一的な価値観を当てはめてしまうことがあります。「○○になりたいなら~」というありがちな訴求コピーも、Z世代にとっては「○○でないあなたはダメ」というメッセージに受け取られる可能性もあるということですね。
「自分ごと化」された情報を重視
情報を得る手段が少なかった時代と違って、あらゆるチャネルから情報を得られる今の時代。Z世代にとって広告から得たいのは、売れ行きや人気といった企業視点の情報ではなく、実際の使用感などの「自分ごと化された情報」です。
この「自分ごと化された情報」というのは、情報を取捨選択する際のスピード感にも大きく影響します。Z世代は膨大な情報から見るべき情報を瞬時に選び取っており、コンテンツへの集中力はたった8秒ともいわれるほど。瞬時の判断に大きく影響するのが、自分に関係ある情報なのかどうかなのです。簡単にいうと頭で考えるよりも、感覚的な「分かる!」「好き!」という“共感”が心をつかむということですね。
SNSのパーソナライズ化はまさにその象徴といえるでしょう。自分の「いいね」などのアクションが反映されてどんどん自分好みにカスタマイズされたその空間は、自分ごと化された共感性の高いコンテンツが並んでいます。広告は、そこに入り込んでくるある意味「異物」。高い共感を得られれば即購買にもつながるチャンスとなりますが、逆に自分ごと化しづらい内容になっていると、パーソナル空間に紛れこんだ余計なものとして反感を買ってしまうことにもなります。
環境や社会問題に敏感
東日本大震災に続く原発事故など、幼い頃から大規模な自然災害を経験してきたZ世代は環境への問題意識を強く持っています。またSDGs教育を早くから受けていることもあり、環境問題だけでなく貧困やジェンダー不平等、人種差別など社会問題全般への意識が高いのが特徴です。そのため商品を見る視点として、品質だけでなく、その商品を通じてどのように社会貢献ができるのかを見る傾向があります。
商品だけでなく販売元である企業の姿勢を見るのも特徴的。いくらブランド力があっても、人種差別やジェンダー不平等に対する理解が不足したプロモーションによって炎上した例は少なくありません。
また労働環境に対する関心も高く、従業員にブラックな働き方を強いる企業は厳しい目が向けられます。商品単体でなく企業も含めて丸ごと社会プロモーションしていくことが重要です。
「嘘」「やらせ」への感度の高まり
多くの情報に触れて育ってきたZ世代は、広告文言の1つからその裏側にあるわざとらしさ、うさんくささといった「嘘のにおい」をかぎ取ることに長けています。
「人気インフルエンサーのおすすめする商品は、単なるPRなのでは?」「求人広告に出ている『アットホームな職場』というのは組織体制が整っていないことの裏返しなのでは?」といったように、本当に良い商品や情報を見極めたいからこそ、そこに嘘の要素が混ざっていないかを感度高く見極めています。
もちろん広告やプロモーションは、企業のアピールしたいことを企業側から伝えるためのものなので、この「やらせ」感を完全に排除するのは難しい部分はあります。ただし過剰表現やごまかし表現などで嫌悪感を喚起して遠ざけられないように、自然体で洗練された広告表現やプロモーション手法を考える必要があります。
02
Z世代の感性を踏まえた「嫌われる」広告表現とプロモーション
ここまで広告に対するZ世代の感性を解説してきました。では具体的にどういう広告表現やプロモーションが嫌われてしまうのか?ここからは実例を交えて紹介していきます。
ステレオタイプな価値観や固定観念の押し付け
多様性を尊重するZ世代は、「○○だからこうだよね」というステレオタイプな価値観が透けてみえる広告やプロモーションを嫌いがちです。
まだ内定がない人に向けて!
一見よくある表現ですが、この場合「まだ」という部分が気になります。就職活動のペースは人それぞれ。「まだ」という表現は「いつまでに内定が出ていないと焦るべき」という価値観の押し付けにも感じられます。
またZ世代は不安をあおるネガティブ表現にも敏感。この一文から内定が出ていない人を煽る意図が感じられ、そこも敬遠される一因となります。
かわいくなりたいあなたに!
これもとてもありがちな広告表現ですが、「かわいい」に注意が必要。KAWAIIは日本特有のカルチャーですが、誰かが決めた「かわいい」にしばられているように感じられると逆効果。「かわいい」を企業側が一方的に定義して他人との比較を促すような表現は避けた方が無難でしょう。
Z世代受けを狙いすぎた広告・プロモーション
いわゆる「若者ってこういうの好きだよね」という考えに基づく広告やプロモーションにも注意が必要です。
例えばTikTokでのダンス動画や流行りの音楽の替え歌、語尾のマネなどを取り入れたプロモーション。もちろん商品やサービスを上手く紹介して売上を伸ばすケースもありますが、逆効果になることも少なくありません。社内の雰囲気の良さをアピールしようとTikTokにダンスやインタビュー形式の動画をアップロードして、コメント欄には「ブラック確定」「こんなことさせられて可哀想」といった批判コメントが溢れることも…。
これらの例の場合、「Z世代受け」という固定観念にとらわれた表現であること、そして企業側の思惑が透ける「わざとらしさ」があることが問題です。特に広告の裏の意図を読み取る能力に長けたZ世代には、受けの良いフォーマットに安易に乗っかったプロモーションは冷めた目で見られがち。もしやりたのであれば、実際のZ世代の意見を取り入れて熟考した上で取り組むのが得策でしょう。
過剰な売り込み感
「大人気!」といった過剰文言や、目を引くためのインパクトの強いビジュアルなども、やりすぎるとZ世代から嫌われる原因に。また広告自体の過剰供給もZ世代に嫌われる要素となります。日々ソーシャルメディアに触れているZ世代は、一日に何回もその広告を見かけることになり、結果的に「ウザがられる」ようになってしまいます。
また自社の商品をアピールする上で、第三者視点からのPRはとても有効ですが、その結果「やらせ感」が出るとZ世代に忌避されてしまいます。プロモーションにインフルエンサーを起用して自社商品のPRを行ってもらう「インフルエンサーマーケティング」は、現在多くの企業が取り入れているプロモーション手法ですが、これにも注意が必要です。
例えば最近話題になっている商品をInstagramで検索すると、同じような画角と文言で大量のインフルエンサーの投稿が出てくる…という光景を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。もちろん「#PR」表示があれば違法ではないのですが、明らかに“言わされている感”のある本音の見えない第三者の投稿は、どうしてもうさんくさくなりがちです。
またそういったインフルエンサー大量起用型の広告は同じ時期に何度も同じ商品を目にします。おすすめ欄がパーソナライズ化されるので余計その傾向が強まります。それが興味を引く要因にもなるのですが、度がすぎると「もういいよ」とうんざりされてしまうので逆効果です。
03
Z世代に愛されるプロモーションのヒント
共感を生むストーリーテリング
広告のわざとらしさを意識させず自然な共感を促すのが、実用性や使用例を交えた「ストーリーテリング型のプロモーション」です。生活の中で役立つ商品として紹介した場合や、その便利さを使用場面等と併せてアピールした場合には、Z世代に嫌悪感を持たれることなく共感を呼び、プロモーションが成功することが多いのです。
これは商品やサービスに限らず、人材や採用系の広告においても同様です。熱いメッセージのこもった一方向的な発信ではなく、採用担当者のこれまでの働き方や仕事にかける思い、印象的だったエピソードなどを求職者の心情に重ね併せて表現することによって、広告自体の受け入れられやすさが向上します。
共感を生む広告表現として近年注目されているのが“エモい”の概念です。広告を行う際にターゲティングは非常に重要ですが、絞り込みすぎると対象外の人には「共感できない」ものとしてさっさと排除されてしまいます。
その境界をすくいとるのが“エモい”という感覚。広告ターゲットの誰もが「経験したかも?」と思えるラインの訴求を行う“エモい”広告表現もZ世代に訴求していく上でのポイントとなります。

環境や社会問題への意識を含めた表現
前述したように、Z世代の環境や社会問題への意識は他の世代よりも強い傾向にあります。だからこそ、企業側は自社の商品や取り組みがどのように「社会貢献」へとつながっているかを示すことが重要です。
商品1つでも、売れ行きや人気ランキングだけを示すのではなく、その商品が実際に社会の中で役立っている事例や、環境への配慮についてデータ等を用いて示すことで、Z世代からの関心度は格段に高まります。その際には、先に述べたようなストーリーテリング型で商品の存在意義を示すことで、よりZ世代の心へと響く広告表現につながっていくことでしょう。
ただしこの際に重要なのが、メッセージの一貫性です。「SDGsウォッシュ」という言葉も生まれているように、取ってつけたようなSDGs施策に対する問題意識も高まっています。企業としてのSDGsや環境問題に対する立ち位置を明確にした上で、一貫した広告メッセージを発信できるようにしましょう。
例えば…
・ものづくり企業の場合:実際の現場で使用されている例を掲載する
・社会インフラを支える事業を展開する企業:その事業が実際にどのように社会で役立っているのか、カーボンニュートラル問題やSDGsへの配慮がなされているかを掲載する

「ささやか」で「たしか」なアピール
過度なアピールを嫌い、嘘のない広告を求めるZ世代。そんなZ世代に好まれるのは、「さりげなさ」と「信頼」を両立する「ささやか」で「たしか」なアピールです。
大げさで強気の広告表現を提示されるよりも、消費者による受容の証となる「UGCコンテンツ」が掲載されていたり、商品に関する実際の満足度評価等をデータとして示した「誇張なしのアピール」をしたりすることでZ世代の消費者に受け入れられる広告となっていきます。
例えば…
「人気ランキング1位!」・「爆売れ」・「大バズり!」→「UGCコンテンツや口コミの評価を載せつつ、満足度評価のデータ等と合わせて商品のポイントをアピールする。その上で、人気ランキング等を示すことで信用が高まる。」
情報量が多く、熱量の高い広告表現を用いるのではなく、そのデータを「ささやか」に、そして、「たしか」な広告によって示すことでZ世代の受容度を高めましょう。
- 自分自身も含めた「多様性」を受容する表現
- 環境や社会問題への配慮を含める
- 嘘ややらせ、わざとらしさを排除し、「ささやか」で「たしか」な表現を意識
- 商品だけでなく企業姿勢も含めた一貫性のあるメッセージを打ち出す
- 共感を生むストーリーテリング型の表現を意識
冒頭にも言ったように、広告だけでなく何に関しても「嫌だな」と思う感覚は人それぞれ。今回示した例の中にも、Z世代である私自身の主観的が大いに入っている部分もあるかもしれません。
ただしそれも含めて、Z世代に好まれるプロモーションを行うには、当事者であるZ世代を巻き込みながらリアルな価値観を感じ取っていくことがカギになると考えます。このコラムがZ世代と企業やブランドをつなぐ架け橋の1つになると嬉しいです。
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企画・構成・編集:ぽん/執筆:西村