話し手も聞き手も。一人ひとりの思いを大切に汲み取って、実直にクリエイティブに向き合っていきたい。
CONTENTS
SCROLL
相手の本音を引き出し、“本質”に迫るヒアリング術
聞きたいことがあるのに、うまく引き出せない。何をどう質問したら、取材や会議を円滑に進められるのか。そんな悩みや課題を持ったことはありませんか?
クリエイティブのための取材やインタビュー、ビジネスシーンでの会議や打ち合わせだけでなく、日常のコミュニケーションにおいても求められるのは「聞く力」です。相手が気持ちよく話してくれて会話が広がると、その分、得られる情報も増えていきます。そしてそれが、より密度が濃く精度の高いアウトプットにつながるはず。
今回は、「ヒアリング術」をテーマに、相手の本音を引き出す取材の手法や心がまえをライター、インタビュアーの竹田がお伝えします。
この記事は、名古屋でコミュニケーションデザインをおこなっているトガルがお伝えします。
01
取材の成否は下準備で決まる
下準備は、相手と対等に話すための土台づくり
取材や打ち合わせにのぞむ前、相手のバックボーンや案件の概要を押さえておくのは基本中の基本。最低限のマナーであるのはもちろん、予備知識があることで相手と対等に話ができるからです。それにより会話をリードすることもでき、求める情報を的確に引き出すことにつながるでしょう。例えば家具メーカーの会社を取材する場合。企業の基本情報を調べるのはもちろん、SNSなどの発信内容もチェックしておきましょう。そこで働く人々の胸の内にある商品や仕事に対する思い、人柄なども見えてくるかもしれません。さらに、取材対象となる業種や商品に対する最低限の知識を持っておくことも重要です。例えば木工家具メーカーに取材するなら、木材の種類や製造工程などの基礎知識をあらかじめインプットしておくと、より深い話が引き出せるかもしれません。
質問リストには余地を持たせる
聞き出したいことを想定し、質問リストを作る。これも下準備の基本ですが、リストには余地を持たせておきましょう。実際の取材では、事前の想定通りに話が進まないことも多々あります。必ず聞かなければならないこと、深掘りしたい点だけは押さえ、会話の流れと相手の返答に合わせて柔軟に対応する。そんな余裕が必要です。また、話の進め方もポイントになります。最初は軽い質問から入って会話を深めながら信頼関係を築き、次第に核心に迫っていく。そんな展開ができると、一番聞きたいこと=最終ゴールにうまく辿り着けそうです。
02
会って3分で信頼関係を築くには
第一印象で相手の心を開く
人のイメージの9割は第一印象で決まると言われ、二度目、三度目の再会でも、最初の印象から大きくは変わらないそうです。表情・しぐさ・身だしなみなどの視覚的印象、声色や話し方などの聴覚的印象の重要性を理解し、好印象を持たれる振る舞いにつなげましょう。TPOに合わせた服装、姿勢なども大切です。初対面の場合は特に、自己紹介の段階から細心の注意を払う必要があります。
状況と目的を共有し、安心感を与える
まずは取材の目的、向かうべきゴールについて説明し、共有しましょう。これから何が始まり、何を聞かれるのか。それがわかると相手も安心しますし、話す内容をあらかじめ想定できるため、取材も円滑に進むはずです。
話しやすい雰囲気作りは自己紹介から
初対面の相手なら、まずは自己紹介を通してお互いのことを知りましょう。その際、自分から話すことが有効です。例えば、相手にたくさん話してもらいたいなら、まずは自分のことをたくさん話す。すると、相手からも同じ分量程度の自己紹介が返ってくるケースが多いように感じます。また、ラフな雰囲気で進行したい場合には、雑談や笑いを交えて自己紹介をします。こちらの思惑や温度感が伝わり、相手の気持ちもほぐれるはずです。自己紹介で会話の空気をコントロールできると、相手もリラックスして会話にのぞめるでしょう。
03
核心へのアプローチ術
相手への好奇心は惜しみなく表現する
自分の話を聞いてもらえると、人は嬉しいものです。適度な相槌やポジティブなリアクションがあると、気分が乗って、さらに話したくなるでしょう。私は以前、アパレル業界にいましたが、接客時に心がけていたのは、まさにこの「聞く力」です。お客さまのお話が会話の主役ですから、商品説明など自分から発言するのは全体の2〜3割程度。質問やリアクションを通してお客さまの話を引き出し、的確な商品提案につなげていました。インタビューも同じ。相手に対するリスペクトと好奇心を持ち、話してくれることに素直に反応していると、話題が広がり、得るものも大きくなりそうです。
感情を引き出す質問で“本質”に迫る
相手のバックボーンや価値観に対する好奇心を持って質問を投げかけると、会話の深度が増して本音や核心に触れることができます。例えば、企業の採用サイト案件で、働く社員にインタビューする場合。事業や仕事の基本情報や事実確認は、事務的な問いかけでも聞き出すことができます。事前にヒアリングシートに記入してもらったり、求人情報を調べてまとめ直したりすることも可能です。でも、その人が体験したこと、感じたことは、その人からしか聞けません。そのため、話の裏にあるドラマや感情を引き出すような質問を投げかけましょう。「なぜ、その選択をしたのですか?」「その時、どんな思いでしたか?」「仕事をする上で大切にしていることは?」など、ピンポイントで本質に迫る問いかけをすると、実体験を振り返りながら具体的なエピソードを語ってくれると思います。そこに、その人にしか語れないドラマがあるはずです。
読み手が求めるストーリーを引き出す
基本情報やアウトラインは、ネットなどを通して誰もが簡単に調べられる時代。だからこそ、企業や商品の背景にあるストーリーに価値を見出す消費者も増えているようです。取材対象になるモノやコト、人のオリジナルドラマを引き出すことが、届けたい相手の心に響く情報発信につながります。
04
相手の言葉を鵜呑みにしない
“完璧に話せる人”はいない
事前に原稿を準備したスピーチや講演でもなければ、その場で理路整然と話せる人はいないと思います。インタビュアーは、翻訳家。言葉にできない思いや、発言の真意を想像し、相手が本当に伝えたいことを的確に捉え、適切な表現でアウトプットしなければなりません。
<話し手の真意を掴む取材ルール>
・録音は聞き返したい時のための保険
・インタビュー音源の文字起こしはしない
(話し手の言葉に囚われすぎないように)
・自分の解釈でわかりやすい言葉に変換してメモする
・発言時のアクセント、表情、しぐさを見逃さない
・受け取り手に伝わる言葉かどうか見極める
解釈をその場で一致させておく
発言の真意や解釈をその場で確認しておくと、制作物や会議議事録などの精度が上がります。自分の理解が正しいか不安に思ったら、曖昧にせず、その場で確認してすり合わせるのも大切なことです。
- 下準備を怠らない
- 第一印象で相手の心を開く
- 安心して話せる雰囲気づくり
- 感情を引き出す質問で本質に迫る
- 相手の言葉を的確に解釈する
適切なアウトプットのために重要なのは、確かなインプット。求める情報を得るために、ヒアリングのスキルは欠かせません。今回お伝えしたちょっとしたコツと心がけを実践すると、情報収集力はきっと上がるはず。取材やインタビュー、打ち合わせ、会議など、あらゆる場面で活用してください。
名古屋で「SNS運用」ならトガル株式会社へ
話し手も聞き手も。一人ひとりの思いを大切に汲み取って、実直にクリエイティブに向き合っていきたい。
企画・構成・編集:たけ/執筆:稲葉