Z世代の視点を取り入れ、メディアの新たな繋がりを創出する。
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Z世代が考える、Z世代とのコミュニケーション

時代の変化に伴い、価値観もコミュニケーションの在り方もどんどん変化しています。当然異なる世代間でコミュニケーションを取る際には、お互いにギャップを感じてしまう瞬間もあるでしょう。それは対面でのコミュニケーションでも、企業が行うマーケティングコミュニケーション(※)でも同様です。
※マーケティングコミュニケーション…企業が消費者に対して商品やサービスの価値を伝えるための活動のこと。
では昨今の若手世代の代名詞とされる「Z世代」にとって好ましいコミュニケーションとは、どのようなものなのでしょうか。今回はZ世代である筆者がZ世代のコミュニケーションのリアル、その背景にある心理を深掘りし、広告やマーケティング活動にどう活かしていくべきかを解説します。
この記事は、名古屋でZ世代向けSNSマーケティングを行っているトガルがお伝えします。
01
Z世代のコミュニケーションのリアル
トレンドへの感度を重視、ラグに敏感
Z世代は非常にトレンドに敏感な世代です。なぜなら、現代のトレンドの発信基地であるTikTokやInstagram、XといったSNSの視聴習慣が根付いているから。SNSはZ世代にとって最も重要な情報源で、他の世代と比べても1日の内にSNSの閲覧に費やす時間が非常に長くなっています。その分、SNSを通じて日々トレンドに関する多くの情報に自然と触れているのです。
そのことは当然、流行り廃りを捉える反応速度にも影響します。TikTokなどである時期に急速に盛り上がった流行も、「最近TikTokであんまり見ないな」と感じれば、それはZ世代の中で「既に流行が過ぎ去ったもの」と認識されるのです。
一方で上の世代にトレンドの情報が届くのは、大抵ネットニュースやテレビに取り上げられてからです。その頃にはSNSではトレンドが下火になっていることが多く、トレンドを捉える速度にラグが生じます。
もちろんそれ自体は悪いことではありません。しかし上の世代が、その1テンポ遅れたトレンドをZ世代とのコミュニケーションツールに用いたときに生じる「ズレ」は、コミュニケーションにおける大きな問題です。トレンドに敏感なZ世代だからこそ、その「ズレ」が拒否反応を引き起こす原因となってしまうのです。

コミュニケーションに慎重な「冷やか」な存在
Z世代は基本的にコミュニケーションに対して注意深さを持っています。あまり他人に深入りせず一定の距離感でコミュニケーションを取り、感情的なアプローチよりもドライな関わりを好む「冷やかさ」があるのが特徴です。
しかしこれは、情報社会に生きるZ世代の防衛本能の一種であり、決してZ世代が人との関わりに無関心であるということではありません。生まれたときからさまざまな情報に囲まれて育ってきたZ世代は、感情的で、距離感のやたら近いアプローチに隠された嘘や胡散臭さをかぎ取る能力に長けています。だからこそ「冷やかさ」を身にまとうことで、そういった嘘から本能的に身を守ろうとしているのです。
Z世代に対する営業やマーケティングのアプローチも同様です。Z世代にとっては根拠のない熱量よりも、データや数字を用いた「合理的なアプローチ」の方がより誠実なものだと感じられます。100回営業に来て、熱い説明を繰り返されるよりもスマートなデータを1度示される方が腑に落ちやすいということです。例えば就職活動における企業選びにおいても、Z世代は「20代から稼げる!」「挑戦を後押しする環境!」のような熱いメッセージではなく、働き方データや休暇取得率などに目を向け、データや数字に基づく会社選びを心がけています。
過剰な押し売りを避ける傾向は日常生活にも表れており、例えばアパレルブランドにて洋服選びをする際に、店員が必要以上に声を掛けてくるブランドは「あの店営業きついよ」「ヘッドホンして話しかけられないようにしてた」と忌避されがちです。実際に某大手アパレルブランドでは「ショッピング中の声掛け」を廃止し、店舗で買い物がしやすい雰囲気づくりと人件費の削減に乗り出しているという実例も存在します。こうした価値観の違いを踏まえることがZ世代との絆を生む鍵となります。
タイパ・省エネ重視
日々大量の情報の中で生きているZ世代は、自分に必要なものを効率よく選びたいというタイパ重視の価値観を持っています。これはコミュニケーションに関しても同じで、長文・複雑な言い回しなどの不要なやり取りを省き、エネルギーを温存する「省エネ」なコミュニケーションを好みます。SNSの投稿も短文と絵文字だけで要点を伝えたり、対面・SNS上の会話の中でも「それな」「草」などの一言で共感を示したりする場面が多く見られます。
一見すると冷たくも感じられるこれらのやり取りですが、Z世代にとっては無駄を省くやり取りは相手への思いやりでもあります。むしろ、余計な要素を削ぎ落としたコミュニケーションがより深い共感や理解を生むことがあるため、彼らにとって無駄を省くことは「冷たさ」ではなく、「コミュニケーション効率化」の方法論の1つであり、「Simple is the best」の精神に則った、彼らなりの処世術なのです。
02
Z世代とメディアとの関わり
SNS広告への警戒心の高まり
Z世代は広告への嫌悪感が強いのが特徴です。その中でもSNS広告はテレビCMやサイネージ広告とは異なり、「注意すべきもの」、もっというと「危ないもの」として映るようになってきています。
その傾向を強めたのが、近年の中華系のインターネットショッピングサイトやファッションサイトの急拡大と、それらのサイトのプロモーション広告です。こうしたサイトや広告によってクレジットカードの情報が抜き取られる被害や、掲載されている画像とはかけ離れた商品が届くなどの多くの詐欺被害が発生したことから、以降、SNSに掲載されている広告は詐欺の可能性があるという認識が若者間で広がりました。「ストーリーズに流れてきたリンクは踏まないようにする」「アドブロック機能を使用する」といったSNS広告への忌避傾向が出てきています。
こうしたSNS広告には作り込みが甘いものが多く、誤植が酷いもの、不自然な翻訳文章、写真素材が粗悪なものが多い傾向にあります。Z世代の広告への警戒感が強まっている今、SNS広告には今まで以上の安全性や透明性に繋がる「質の高さ」が求められています。
UGCの影響力が増大
Z世代の警戒心が高まるSNS広告に対して、近年信頼度が増しているのが、第三者のユーザーによるSNS投稿、つまり「UGC」を活用した広告です。利害関係のない第三者による情報発信が高い信頼性を獲得することは、心理学的にも「ウィンザー効果」として知られています。それに加えてSNSを主たる情報源とするZ世代だからこそ、一般ユーザーのSNS投稿をより信頼する傾向があるといえます。
実際にSNS上では、企業自体が投稿しているPR動画よりも、一般人やインフルエンサーによる率直な感想を聞ける投稿の方が再生回数やいいねを伸ばす傾向にあります。嘘偽りのない本音というのが、先ほども言った「情報の透明性」にもつながるのです。

SNSの検索窓を駆使した、効率的な情報収集
Z世代が情報収集をする際、学術的な事物、イベントスケジュールなど、正確で確実性のある情報が欲しい場合を除き、基本的にはSNSを利用します。これはSNSが、Z世代の価値観に非常にマッチした検索特性を有していることが理由です。
1つが、先ほども述べたUGCを得られることです。SNSの検索窓に「表参道 美容室」、「メンズ ファッション」と打ち込めば、同世代による溢れんばかりの写真・動画付きの投稿が表示されます。企業広告だけでなく第三者の投稿を一気に参照できることは、UGCに情報価値を置くZ世代にとって非常に魅力的なのです。
もう1つが、検索の効率性です。検索エンジンで表示されるサイトと違って、SNSのUIは1つの投稿に必要な情報がコンパクトにまとまっています。これはタイパを重視するZ世代にとって重要な特徴です。またアルゴリズムによって自分好みにパーソナライズされた情報が集う仕様となっていることで、より効率性が増しているのもポイントです。

03
企業の視点から考える、Z世代とのコミュニケーションのポイント
トレンドの迅速なキャッチアップ
Z世代と上の世代の「情報ラグ」を考えると、目をつけた「若者の流行」が、若者たちにとっての「過ぎ去った流行」である可能性があります。実際に上の世代の芸能人などがYouTubeで流行りのものを取り上げると、コメント欄に「今さらこれ?」「もう終わっている」という言葉が溢れるのはよくみる光景です。
こうした状況に陥らないため、Z世代に関するマーケティングやプロモーションを講じる際には、Z世代に近い年齢のメンバーをチームに入れるなど、Z世代と同じ「感度」でトレンドを捉えることが重要です。また「嘘」のにおいに敏感なZ世代だからこそ、流行りをただ取り入れるだけでなく、自然な形で取り入れていくことがZ世代に受け入れられる上で重要なポイントです。
シンプルで簡潔なメッセージ
冷静さを持ち、タイパ重視のZ世代。広告やマーケティングにおいても、冗長で感情的なメッセージよりも、シンプルで合理的、かつ直感的なアプローチが効果的です。例えば、長い文章よりもキャッチーなコピーや視覚的に分かりやすいビジュアルが好まれる傾向にあります。
Z世代に向けた広告やSNS投稿を考える際に大切なのが、「1秒しか見てもらえない」という前提からスタートすることです。TikTokでは6秒視聴率などの指標もありますが、現実にはもっともっとシビアな印象です。1秒で興味を引くビジュアルやキャッチコピー、メッセージが伝わるショート動画を基準にコンテンツを洗練させていくことが、Z世代とのコミュニケーションの鍵です。
またZ世代向けの合同企業説明会でも、シンプルなメッセージを心がけるのが有効です。ある企業では、企業説明用のパンフレットではなく、自社が展開するサービスの関連ロゴが入ったステッカー、デザインに富んだシールを配布し、その裏面にQRコードを載せておくことで企業を知ってもらうという採用戦略を講じており、省エネを好むZ世代から好評です。
ビジュアルの洗練性
Z世代はSNSでの発信が当たり前で、だからこそ写真・映像に撮ったときの「りなるな映え」に非常にこだわる世代です。そのため「ビジュアルの洗練性」は企業とZ世代のコミュニケーションの入口として非常に重要です。
合理性重視と思われがちなZ世代ですが、実は価値があると思うものにはお金を使うことをいとわない傾向もあります。例えばパン屋や居酒屋などの飲食店を選ぶとき、美味しさや素材よりも「お店の外観が素敵」「料理が映える」ことを優先し、多少割高でも、「映え」のためなら奮発する人も多いのです。
洗練されたビジュアルがもたらす効果は大きく2つです。1つはZ世代によるUGCの増加。「投稿したい!」と思わせるような洗練されたビジュアルの商品やサービスを提供することで多くのUGCが生まれ、それを見たZ世代が自分でも体験し、また新たなUGCを生み出す好循環がつくられます。
もう1つが、企業自体の信頼性の向上です。先にも述べたように、企業が発信する広告、特にSNSへの警戒心を募らせているZ世代。盛りすぎず洗練されたビジュアルイメージは「この企業はちゃんとしている」という単純なイメージアップにつながるのです。
UGC促進の仕掛け
UGCは自然発生的に生まれるものですが、企業としてZ世代とのコミュニケーション戦略を考える上で、UGCをある程度コントロールすることも求められます。ユーザーによるタグ付け機能や、評価型投稿を促すためのインセンティブの仕組みを整え、UGCの投稿を促進することは何よりも大きな「広告効果」に繋がることが予測されます。
ただしZ世代にとってのUGCの本質は、第三者による信頼できる情報だという点です。「結局広告か」と思われないよう、透明性の確保に留意したUGC施策となるようにしましょう。
<Z世代関連記事>Z世代がInstagramで体験を発信する理由 >
スピーディーで効率的なコミュニケーション
ここまではどちらかというと、企業による一方的なコミュニケーションのポイントを述べてきました。しかしZ世代に特徴的なのは、SNSを活用した「双方向コミュニケーション」に慣れている点です。テレビCMなどと違い、SNSでの企業の発信に対してユーザーが気軽に反応したり、問い合わせをしたりすることが容易になっています。
そしてタイパを重視するZ世代は、「即レス」に誠実さを感じます。特に家族や友人と違ってそれまでの関係性の構築がない企業とのやり取りでは、なおさら「即レス」をもらえること誠意を感じ、信頼を寄せるのです。Z世代はちょっとした隙間時間に自然とSNSを見ているため、「さっきDMで問い合わせたことが、今開いたらもう返事が来ていた!」というように、スムーズにストレスなくやり取りできることで好印象につながります。
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- 「即レス」「話しかけすぎない」コミュニケーションで好感度アップ
コミュニケーションの基本は、価値観の尊重です。価値観は時代によってどんどん変わっていくものだからこそ、「今の若い世代は分からない」で済ませずに、アップデートする視点が何より大切です。今、時代の先端にいるZ世代の価値観を知ることは、企業や社会のアップデートにもつながるでしょう。その価値観に合わせたコミュニケーションを考えることで、企業自体の価値も高めていきましょう。
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企画・構成・編集:ぽん/執筆:西村