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最後までブレないディレクション術

2025.03.11
SHEARE

クリエイティブの過程では、さまざまなことが起こります。
企画の発案、ラフ作成、スタッフとの共有、取材・撮影、実制作…。
多くの人と関わりながらプロジェクトが進む中、新しいアイデアが加わったり、現場で想定外の事態に直面したり。
そんなときディレクションする立場だったら、あなたは、どうしますか?

最も重要なのは、目的。
目的を明確にして、その達成に向けた軸(基準)を定め、それに基づいて制作を進めていけば、道を外すことはないはずです。
その上で、手掛ける媒体の特性、誰が何を求めてそれを見るのか、取り上げる対象の魅力は何なのか、伝えたいのはどんなことか、それらを的確に伝えるにはどうしたらいいのかをそのつどジャッジしていきましょう。

今回は、企画から制作までのブレないディレクション術を、デザイナーの岡崎が担当する業務の事例をもとにお伝えします。

この記事は、名古屋でSNS運用をおこなっているトガルがお伝えします。

ファーストステップは、企画。そもそもの目的、誰に何を伝えたいのかを明確にして、それに合わせて目指すゴールに向かって骨子を設計します。この完成度を高めておくと、後の工程でズレが起きても軌道修正しやすいはずです。ここからは、私が実際にディレクションを担当している企業の採用SNSを例に、企画のポイントや手順をお伝えします。

媒体:企業の採用アカウント
目的:応募者数の増加
伝えたい相手:就活生

採用に関する課題を企業にヒアリングし、SNSでの解決策を提案。使用するプラットフォームを生かし、仕事内容、企業の雰囲気などを就活生に対し効果的に伝える投稿スタイル、内容を考えます。ここでポイントになるのが、SNSの特性を生かすこと。「誰に→就活生」「何を→独自の情報」を明確にした上で、会社案内パンフレットやWebサイトでは伝えられないリアルな情報、写真や動画の効果的な使い方を精査しましょう。

企画が固まったら、完成予想図を作ります。取材・撮影対象について事前に調べ、その魅力は何なのか、それをアピールすることが企画=軸と合致するかを検討。記事やビジュアルの構成を練り、文章や写真も想定したラフを作成します。これが、クリエイティブを進めていく上での大事な設計図になります。制作の過程で迷ったり、想定外のことが起きたりしても、このラフに立ち返れば大丈夫。目的を見失わず、正しい方向に戻ることができると思います。

その職種の概要、業務内容、仕事の面白さ、やりがいなどを事前に把握し、就活生に響くポイントをピックアップして効果的に伝わる構成、写真のイメージなどを決める。

クリエイティブの設計図であるラフの完成度が低いと、後々の「ブレ」のもと。最初に決めた軸からブレないラフを作るためのポイントを押さえておきましょう。ただ、あくまで設計図なので細部の作り込みに時間をかける必要はありません。当日、現場に入り実際に取材・撮影をしてみて取り上げるポイントが変わったり、取材対象者、カメラマンなどから新たな要望・提案が出てきたりすることもあるでしょう。それらをうまく取り入れブラッシュアップしていけるようなゆとりも残しておきたいものです。

〈ラフのチェックポイント〉
・目的と内容が合致しているか
・取材対象の魅力が伝わるか
・ストーリー構成や想定する文章に矛盾はないか
・細部の作り込みにこだわらない
・軸は持ちつつ軌道修正できる余白をつくる

事前にアンケートが取れる場合は、想定した構成に沿って質問を準備。例えば企業の採用SNSで社員の方に取材する場合、クライアント経由で質問シートを本人に渡してもらいます。この段階でクライアントのチェックが入るため、ヒアリング内容や構成への要望を確認でき、ズレを軌道修正した上で完成形のイメージを共有できるメリットがあります。

事前にアンケートが回収できた場合は、取材当日までに内容を確認。想定していた構成に沿っていなければ、構成を再度練り直します。その際、目的から外れないことが重要。そして、さらに膨らませたい箇所や気になった点などを当日の取材で深掘りします。事前アンケートなしで取材にのぞむ場合は、ある程度の返答を想定した質問リストを準備し、ヒアリングを進めながら気になったポイントを深掘りしていきます。いずれにしても、取材に必要なのは最終的な記事を読む人の視点を持つことです。

〈質問リストの作り方〉
・構成に沿って質問項目を設定
・事前アンケートの回答によっては構成を練り直す
・クライアントチェックで軌道修正
・返答を想定し、その先の質問も用意する

ラフをもとに撮影内容やシーンを想定。メインのイメージカット、サブカット、カクハン、キリヌキ等、デザイン上の条件なども加味しながら詳細を決めておきます。

ex)採用SNSの職種紹介コンテンツの場合
・業務内容に合わせたイメージを想定
 →接客・会議・デスクワークなど
・伝えたい内容に合わせて具体的なシーンを想定
 →「後輩の成長がやりがい」なら、後輩に指導している様子など

撮影当日は、想定したシーンに沿って撮影していきます。まずは、当日のタイムスケジュールや事前アンケートをもとに取材対象者と最初に軽く打ち合わせをしましょう。想定したシーンと実状に違いがないかなどを確認しながら、撮影カットの詳細を決めます。
また、このときにコミュニケーションを深めることで、取材対象者がリラックスして撮影にのぞめる雰囲気を作ります。すると撮影中も自然な笑顔が生まれ、対象者がより魅力的に映る表情を捉えられるはずです。

できれば撮影と取材を同時進行せず、それぞれに集中できるゆとりあるタイムスケジュールを組みましょう。また、すべての行程にクライアントに立ち会ってもらい、ワンカットずつ確認しながら撮影を進める環境づくりも大切です。スタッフ、クライアント、取材対象者など、現場の全員がクリエイティブの完成イメージを共有していると、クオリティを保ちながらスムーズに進行できると思います。

〈対象者を魅力的に見せる撮影ディレクション〉
・想定シーンと実状を現場で確認し撮影カットの詳細を決める
・取材対象者がリラックスできる雰囲気を作る
・撮影と取材、それぞれに集中できるタイムスケジュールを組む

ブレないディレクション5つのポイント
  • 目的を明確にした企画
  • ブレそうになったら立ち返る設計図づくり
  • 質問リストをもとに当日深掘り
  • 対象者の魅力を引き出す撮影
  • 完成形をイメージした現場作業(取材・撮影)

案件が走り出すと、いつの間にか進む方向がズレていたり、そもそもの目的が変わってしまったりすることもよくあります。特に、取材や撮影といった実作業の現場では、当日の環境や条件によって想定通りに物事が進まないことも。そんなときに必要なのが、原点に立ち返って適切に軌道修正しつつ、想定外のこともうまく取り入れより良い制作につなげる力。臨機応変に対応しながら、軸は決してブレないディレクションスキルを身に付ければ、目的達成につなげるクリエイティブの精度はもっと上げられそうです。

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みしゃん
デザイナー
みしゃん
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伝えたい人に伝えたいことが伝わるように。

様々な生き方がある現代。それぞれの考えに寄り添い、心を動かすひとつのきっかけとなるものをつくっていきたい。

企画・構成・編集:みしゃん/執筆:稲葉

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