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インバウンド集客を強化させる食習慣への対応- ムスリム・ヴィーガン・ベジタリアン –

2026.03.06
SHEARE

「日本にある料理は何が入っているかわからないから食べられない。カップラーメンについているスープも不安だから、お湯だけ入れて食べているよ。」

日本に来た外国人観光客から、こんな声を聞いたことがあります。海外には、宗教等の理由により食べられない食材がある人は少なくありません。

外国人観光客が快適に日本で過ごせる環境づくりは、インバウンド集客を行う上で欠かせません。特に食事は海外旅行における重要な要素であると同時に、文化的背景等を踏まえた繊細な配慮が求められます。私たちの“当たり前”との違いを知って工夫を取り入れ、誰もが安心して利用できる「グローバルホスピタリティ」 を実現させていくことが重要です。

今回は、多様な価値観・背景を持つ外国人観光客の中でも特に厳格な食習慣を持つベジタリアン・ヴィーガン、ムスリムに着目し、基本知識と対応方法を紹介していきます。なお本記事は、観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド(令和6年4月)」に基づき作成しました。

日本と海外の食習慣の違いは、単純な好みの問題ではなく、宗教や文化、価値観や信念など、様々な背景・目的があることが多くなっています。多様な文化的背景を持つ外国人観光客に日本での体験を快適に楽しんでもらうためには、それぞれの国や人の持つ慣習を理解し、尊重することが大切です。

そこで、まずはムスリムとヴィーガン・ベジタリアンの食習慣の背景を解説します。

ムスリムの食習慣の背景

イスラム教の信者である「ムスリム」は、唯一神アッラーが決めた、人にとって良いもの「ハラール」と、禁じられたもの「ハラム」を整理しており、食習慣をはじめとして「ハラール」なものを選択して生活することで信仰を示しています。

またイスラム教の信条は食事だけでなく生活全般に大きく影響を及ぼしているのが特徴です。例えば1日5回の礼拝、ラマダーン(断食月)の実施、女性は髪や肌を隠すヒジャブなどの着用など、コーランと預言者の教えに基づいた生活習慣を持ちます。

今回の記事ではムスリムの“食習慣”に特化した対応を紹介していきますが、ムスリムの食習慣は、イスラム教の教えに根差した生活習慣の一部です。配慮の行き届いたグローバルホスピタリティを提供していくために、食習慣の違いだけを切り取って理解するのではなく、その背景にある宗教的信条や生活習慣についても理解を深めることが重要です。

ヴィーガン・ベジタリアンの食習慣の背景

ヴィーガン・ベジタリアンを選択する人の背景としては、以下のような理由が考えられます。

●宗教の信条
戒律や教義に基づき、特定の動物や肉食を避ける生活様式として選択される。主に仏教、ヒンドゥー教等

●動物愛護
動物の権利保護、動物を搾取・殺傷しないという倫理観から、動物性食品を避けることを選択する

●環境保護
畜産がもたらす温室効果ガス排出や資源消費を減らす目的で動物性食品を避けることを選択する

●健康維持・増進
摂取カロリーの調整、生活習慣病予防や体調管理のため、植物性中心の食事を志向する

ベジタリアン・ヴィーガンの考えも宗教と同様に生活習慣全般に及ぶ場合が多く、リアルファーやレザー、動物実験を含む製品を避けるなど、消費活動全体の選択にも影響することが多くなっています。単にヴィーガン・ベジタリアンメニューを提供するだけでなく、その思想や信条の背景まで理解した店舗づくりを心がける必要があります。

ムスリムやヴィーガン・ベジタリアンの方は、常に厳格に基準・決まりを守っているわけではなく、特に海外旅行時には食事制限の基準を緩める方もいます。すべての人に対応する環境整備は難しい部分がありますが、より多くの方が安心して食べられる環境づくりのためにも理解と配慮は欠かせません。

ここではムスリムとヴィーガン・ベジタリアンそれぞれの食習慣の基本知識と、店舗や商品にすぐにでも取り入れやすい対応方法の具体例を紹介します。

【ムスリム】食習慣と対応方法

ムスリムの食習慣の基本

ムスリムの方へ提供する食事は、ハラール対応が必須です。豚肉、アルコールを避ける必要があり、アルコールは料理酒・みりんに含まれるものであっても口にしないムスリムもいます。豚肉以外の動物性の食材については、イスラムの定める適切な屠殺方法で処理した「ハラール肉」のみを食べることができます。また、豚肉由来の加工品も避ける必要があり、ゼラチン、ラードなどにも注意が必要です。

【ムスリム】食習慣への対応方法

前述の通り、旅行中の食事制限の基準は人それぞれ異なるものの、ノンポーク・ノンアルコール・ハラール食材の使用はムスリム対応の基本です。

ただしすべての規律に応える完全なムスリム対応の環境にするのは容易ではありません。ムスリム対応の度合いを理解し、段階的な環境整備、適切な情報開示によって判断材料を提供することが重要です。

ムスリム対応の度合い

●情報開示
食材や調理方法、アルコール・豚由来成分の使用有無を明示し、ムスリムが自ら判断できる情報を提供

●ノーポーク・ノーアルコール
豚肉・豚由来成分、アルコールを使用しない対応

●ムスリムフレンドリー
食事配慮や礼拝スペース案内、表示対応など、部分的なムスリム対応を行う

●ハラール認証取得
第三者機関の認証を受け、食材・調理・管理まで基準を満たす。ムスリムが安心して利用できる最高水準

ムスリム対応の最高水準「ハラール認証」とは

「この店(または商品)は、イスラム教のルールに配慮している」と第三者が証明する制度です。認証があることで、ムスリムの方は安心して食事をすることができますが、日本には国が行う統一した認証はなく、民間の認証団体がそれぞれの基準を設けて認証しています。

飲食店の場合、審査対象となるのは以下のような項目が挙げられます。

  • • 使用食材(原材料・調味料)
  • • 仕入先・成分表の管理
  • • 厨房での調理工程
  • • ハラル食材と非ハラル食材の分離
  • • 調理器具・食器の使い分け
  • • アルコールの扱い
  • • 従業員への教育・マニュアル

一方でハラール認証は取得費用の高さや厨房制限の厳しさなど、導入難易度が高いのも特徴です。段階的な環境整備を進めた先の選択肢の一つとして認識しておきましょう。

【ヴィーガン・ベジタリアン】食習慣と対応方法

ヴィーガン・ベジタリアンの食習慣の基本

ベジタリアンは肉や魚介類を食べず、主に野菜類や豆類を口にする人を指します。動物由来の食品を一切口にしないわけではなく、卵や乳製品は食べる人もいます。

ヴィーガンは動物由来の食品を一切口にしない人を指します。肉や魚介類を食べないだけでなく、はちみつやゼラチンなど、動物搾取や動物利用を前提とした食材を食べないのも特徴です。

ヴィーガン・ベジタリアンは考え方や許容範囲の違いによって細かく分類が異なります。

主な分類

●ラクト・ベジタリアン
肉・魚・卵は食べないが、乳製品は摂取する

●オボ・ベジタリアン
肉・魚・乳製品は食べないが、卵は摂取する

●ラクト・オボ・ベジタリアン
肉・魚は避け、乳製品と卵は摂取する

●ペスコ・ベジタリアン(ペスカタリアン)
肉は食べないが、魚介類は摂取する

●ヴィーガン(完全菜食主義)
肉・魚・卵・乳製品・はちみつなど、すべての動物性食品を避ける

●エシカルヴィーガン
食事に限らず、毛皮・革製品・動物実験製品なども避ける

●フレキシタリアン
基本はベジタリアンだが、状況に応じて動物由来の食材も摂取する

ヴィーガン・ベジタリアンの食習慣への対応方法

ベジタリアン・ヴィーガンの分類を問わず、以下は最低限注意すべきポイントとして押さえておくことが大切です。

●肉以外の食材
肉・魚だけでなく、卵や乳製品、はちみつやゼラチンなどの使用
●出汁
かつおなど動物由来の出汁の使用
●原材料
調味料や加工食品等への動物由来の素材の使用

ヴィーガン・ベジタリアンもムスリムと同様に対応の度合いがあるため、段階的な整備が必要です。以下を参考に、段階的な環境整備をしていきましょう。

ヴィーガン・ベジタリアン対応の度合い

●情報収集・理解
ヴィーガン・ベジタリアンの分類や避ける食材を把握し、原材料や調理工程を説明できる体制を整える

●一部食材の変更などでの対応
既存メニューから肉・魚・動物性だし等を除く、または代替食材に変更し、可能な範囲で対応する

●ヴィーガン・ベジタリアン向け新規メニューの提供
動物性食材を使用しない、または明確に区別した専用メニューを開発し、安心して選べる環境を整える

【共通の対応方針】配慮の明示による安心感の醸成

ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリムは個人によって規範の順守度が異なります。どのような人も安心して食事を楽しめるような環境に向けては、食への配慮を明示することが重要です。

ポリシーの明示

「どのような内容に」「どの程度」対応しているのかをポリシーという形でわかりやすく正確に明示することで、来店するお客さまの安心感につながります。SNSへの投稿や店内への掲示によって対応内容を明確化しましょう。

使用食材の明示

日本語を読むことが困難な外国人でも、視覚的に理解できるマークによって使用していない食材を明確に理解できることが安心感につながります。豚肉、アルコール類、動物性食品など、全ての料理から取り除く必要はありませんが、いくつかのメニューには「この食品が使われていないんだ」と外国人が見て判断できるように工夫を行いましょう。

食事の場におけるグローバルホスピタリティを心がけたら、それが外国人観光客に届くように周知していく必要があります。外国人観光客が、それぞれの文化に合ったサービスを見つけやすい仕掛けをすることが重要です。

SNS・Webオウンドメディアで効果的に発信する方法

宗教対応の食事情報を適切な方法で発信することで、日本で食事の選択肢が少なく悩んでいる外国人の元へ情報が届きやすくなります。SNS・Web・オウンドメディアでの情報発信の工夫はインバウンド集客を効果的に進めるために重要です。

方法1 )「Halal available」「Vegan OK」等のハッシュタグ

最も取り組みやすいのが、投稿へのハッシュタグの追加です。ムスリム、ヴィーガン、ベジタリアンが店舗を探す際のキーワードを把握し、投稿に追加することで、効率的に情報を届けることができます。

●ムスリム向け
#halal #halalfood #muslimfriendly #halalinjapan

●ヴィーガン向け
#vegan #plantbased #veganfriendly #veganinjapan

●ベジタリアン向け
#vegetarian #vegetarianfood #vegetarianfriendly #vegetarianinjapan

方法2 ) 投稿をピン留め

SNSなどオウンドメディアで発信する際、外国人向け専用のアカウントを作成する場合もありますが、既存アカウントの工夫次第でグローバルホスピタリティに配慮した店舗としてPRすることができます。

その方法の1つが、外国人向けの投稿の作成です。「For Foreigner」や「For Vegetarian」などわかりやすいタイトルをつけ、食事への配慮や対応についての投稿を行います。複数の投稿から当該の内容を見つけ出すのは難しいため、外国人向けの重要な情報を1つの投稿に集約し、さらにアカウントのトップにピン留めしておきましょう。

ただしこれはアカウント自体への流入を増やす手段ではなく、既に興味を持ってアカウントに訪れたユーザー向けの対策です。上述したハッシュタグ施策と組み合わせて実施するとより効果的です。

方法3 ) Google Mapsのビジネスプロフィール属性を設定

多くのムスリムやベジタリアン、ヴィーガンの人たちは、Google Mapsを利用して「Vegetarian Restaurant Aichi」のように検索し、自分が食事できる飲食店を探すのが一般的です。Google Mapsで検索上位に上がるために、Googleビジネスプロフィールのカテゴリ設定を行いましょう。

お店の基本情報の欄に、「ハラルメニュー」「ビーガンメニュー」「ベジタリアンメニュー」などと表記することができます。これによってGoogleはお店の情報を正しく認識し、利用する外国人にとっても情報を確認しやすくなるため、改めてGoogle Mapsのカテゴリ設定を行っているか確認しましょう。

また、Googleは口コミに入ったキーワードを拾ってユーザーにおすすめする傾向があります。口コミ促進施策などを行う場合は、合わせて「ハラール料理があって安心」「ベジタリアン料理が美味しかった」などキーワードを入れてもらうように依頼するとより効果的です。

専門サイトやアプリを活用した集客術

ムスリム向け、ヴィーガン・ベジタリアン向けの専門サイトやアプリを活用することで、効果的に情報発信ができます。

ムスリム、ヴィーガン・ベジタリアンに特化したサイト・アプリの一例

●HALAL GOURMET JAPAN
日本最大級のムスリム向けレストラン検索アプリ。日本国内のハラール対応飲食店・商品を検索できる
https://www.halalgourmet.jp/ja

●HappyCow
世界中のヴィーガン・ベジタリアン対応飲食店を探せる定番アプリ。ベジタリアン等対応の宿泊施設に関する情報も掲載されており、旅行者の利用率が高い
https://www.happycow.net/asia/japan/

●Vegewel
日本のヴィーガン・ベジタリアン飲食店や商品情報を発信する専門サイト。日本の飲食店のみが対象のため、国内向けの集客に強い
https://vegewel.com/

また一般的に使用されるレストランや宿泊施設の予約サイトでも、キーワードを明記することでソートをかけられるようになります。ムスリムやヴィーガン・ベジタリアンに特化した専門サイト等の利用とあわせて、一般予約サイトでも忘れずにキーワードを盛り込むようにしましょう。

インバウンド集客を強化させる食対応5つのポイント
  • 食習慣の特徴や背景を理解する
  • 対応の「度合い」を理解し、段階的に取り入れる
  • ピクトグラムやポリシーの設置で、適切な情報開示を行う
  • 対応情報の発信により、インバンド対応を印象付ける
  • 専門の検索サイトやアプリを活用する

飲食店のインバウンド集客を強化するために

外国人観光客が安心して快適に日本での滞在を楽しめるための工夫の1つとして、今回はムスリムやヴィーガン・ベジタリアンの食習慣への対応方法を紹介しました。既にお伝えしてきたように、最初から完璧を目指して環境整備を進めるのではなく、ニーズの“度合い”を理解した上で段階的に受け入れ態勢を整えていくこと、そしてその対応を効果的に情報発信して届けていくことが大切です。

そしてこれらの対応の根幹には、宗教や個人の価値観の理解と尊重があります。それぞれの国や人の持つ慣習を知り、尊重し合うことを大切に、インバウンド集客を強化していきましょう。

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しん
トガル株式会社 企画編集担当(長期インターン生)
しん
トガル株式会社 企画編集担当(長期インターン生)
大学で情報デザインと海外異文化について勉強中。
多様な人々、多様な生き方に寄り添ったメディアを発信。
グローバルな視点を取り入れ、コミュニティのさらなる広がりを創出する。

企画・構成・編集:しん/執筆:西村

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