まちづくりの視点を取り入れ、コミュニティの新たな繋がりを創出する。
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再開発において残すべき価値
近年、都市構造の変化やコンパクトシティ化の推進など複合的な要因を背景に、全国の都市で再開発プロジェクトが進んでいます。名古屋市でも再開発ラッシュが続いており、10年後には「名古屋駅」「栄」「金山」の景色が大きく変化すると予想されています。
新しいビルやタワーマンション、大規模商業施設の誕生は都市を活性化させ、生活を便利にするでしょう。しかしその一方で、急速な変化の中で「その土地らしさ」や「その土地にまつわる人々の記憶」が失われてしまうことへの不安を抱く人も少なくありません。
再開発は単に都市を刷新する営みではなく、未来に引き続くべきまちの価値を見極めるプロセスでもあります。本記事では、利便性や経済効果の裏で見落とされがちな価値、そして再開発において残すべき具体的な要素を探っていきます。
01
再開発の意義と影響
再開発が進む背景
全国的に再開発が進む背景には、さまざまな要因があります。
例えば少子高齢化や人口減少による都市構造の変化、市街地や住宅地の老朽化などもその1つ。また日本全体の活力を維持し、国際競争力を高める上でも、都市の魅力と機能を強化する必要性が増しています。
さらに大規模災害への対策や「まちなか再生」などの持続可能性への意識向上も追い風となって、都市の再編・高機能化を目的とした再開発が加速しています。
「高層化」「大規模・複合化」する再開発
近年の再開発にみられる特徴的な傾向は、主に「高層化」と「大規模・複合化」の2つです。
高層化(超高層ビル・タワーマンションの増加)
高層化のポイントは土地の有効活用です。住宅やオフィス、商業機能を一体的に収容することで、都市の利便性を飛躍的に向上させることができます。また新たに建設される高層ビルは一般的に耐震性能が高く、防災性能を最新基準で確保しやすいという点もメリットです。
大規模・複合化(ミクストユース)
大規模商業施設や複合施設の建設は、新しい人の流れを生み、観光やビジネス拠点としての都市のブランド価値を高めることが期待できます。例えば東京都港区の「麻布台ヒルズ」は象徴的な大規模・複合開発プロジェクトで、オフィス・住宅・商業・緑地を統合した開発が進んでいます。

再開発による影響・効果
こうした再開発による主な影響として、「まちのにぎわいの創出」と「経済効果」、「生活の質の向上」があげられます。
新たな住民の流入や関係人口の増加によってまちのにぎわいが生まれることは、まちの魅力を向上する上で重要な要素です。また経済効果については、「消費の活性化」だけでなく「雇用の創出」という点でも影響があります。さらに老朽化した建物の再生、都市景観の整備は生活の質の向上に直結します。

02
再開発に引き継ぐべき「価値」とは?
住みやすさやまちのブランド価値において重要な影響を及ぼす都市の再開発。しかしただ古いものを壊して新しくするなど、地域特性を鑑みない再開発は、かえって地域に混乱をもたらしかねません。
ここでは再開発をする上で引き継ぐべき「価値」について解説します。
再開発で失われがちな価値
歴史性/記憶
街並みや古い建築物は、地域の歩んできた歴史そのものです。再開発によって古い建物が取り壊されることは、まち固有の歴史や記憶、世代を超えて受け継がれてきた物語が失われる可能性を内包しています。
地域コミュニティ
まちには路地や長屋、商店街など、日常的な交流を生み出す空間が存在します。しかし高層マンションに移り住むことで、「顔の見える関係」が失われ、孤立感が生まれるケースも少なくありません。
また再開発によって人口が急増することでコミュニティのあり方が変化し、既存住民と新規住民のコミュニティが断絶するケースもあります。
文化的多様性
再開発によって画一的な高層ビルや商業施設が建設されることで、そのまち独自の個性が失われがちです。また地域に根差した個人経営の多様な店舗が大手チェーンに置き換わることで、まちの魅力や多様性が失われる可能性があります。
都市の偶発性
小路や空き地、偶然の出会いが生まれるような「余白」は、新しい文化や活動の芽を育てます。再開発で画一的に整備されると、この偶発性が排除され、都市が平板化してしまいます。
上で挙げたものは、まちの個性や魅力を支える根幹的な価値といえるでしょう。再開発によって失われがちなこれらの価値をどう評価し、再開発がもたらすメリットとバランスを取り、地域の魅力を最大限に引き出す再開発を進めていくことが大きな課題となっています。

引き継ぐべき価値
土地の成り立ち(地形、産業、風土、信仰等)
都市空間は長い歴史の中で形づくられたものです。地形や産業、風土、信仰などの文化的背景など、その土地の成り立ちを無視した再開発は、短期的には効率的に見えても、長期的に申告な弊害を生む可能性があります。
例えば地形を無視した再開発は浸水や土砂災害など災害リスクの増大を招きます。また産業構造の無視は、地域経済の基盤の弱体化につながります。さらに寺社を核に人々が集まった門前町や職人の手仕事が根付いた下町など、信仰や祭礼も含む歴史文化の軽視は、地域アイデンティティの崩壊につながりかねません。
再開発においては、そのまちを形づくってきた歴史文化をしっかりと把握した上で、連続性のある整備を行うことが求められます。
歴史的建築/景観・記憶
そのまちを象徴する歴史的な建築物や景観に寄与する建築物は、地域アイデンティティやシビックプライド(まちへの誇りや愛着)につながります。こうした建築物を保存し、新しい都市空間と調和させる取り組みが重要です。
物理的に建築物を残すことももちろんですが、まちにまつわる人々の「記憶」を保存するという観点も大切です。震災遺構や産業遺産などは、物理的な保存はもちろん、デジタルアーカイブの活用によって次世代への文化継承や歴史教育に活用していくことも欠かせません。
コミュニティ・社会的なつながり
前述したように、再開発によってまちににぎわいが生まれる一方で、既存コミュニティが縮小していく可能性も含んでいます。例えば『歩いて読みとく地域デザイン』では次のように語られています。
平屋で住んでいると、朝起きたら玄関の扉を開けて隣近所に『おはよう』と声をかけ合うことができる。マンションに移るとそれが出来なくなる」
引用:(山納洋.歩いて読みとく地域デザイン.学芸出版社, 2019)
この言葉が示すのは、生活の中に当たり前に息づく人間関係が、「暮らし続ける」上でのかけがえのない価値だということです。ただ新たな人の流れをつくることだけが再開発ではありません。そこに生まれる小さな交流を支える環境をどう再現するかが、まちへの愛着や誇りを育む鍵となります。
商店街や横丁のような場は日常的な交流を、小路や空き地などの「余白」は偶然の出会いを生み、そして市場や銭湯、広場などは多世代が集う地域のコミュニティ拠点となります。こういった場の役割を理解し、承継・再解釈しながらまちに組み込んでいく工夫が求められます。

03
再開発の事例
北野地区(兵庫県神戸市)
〈残した価値〉:歴史的建築/景観・記憶
異人館や洋館が立ち並ぶ神戸市北野エリアでは、「神戸北野ノスタ」や「パンとエスプレッソと異人館」など、リノベーションを通じてカフェや店舗に転用され、歴史的景観と現代の生活が融合しています。
ただ「残す」だけでなく、リノベーションによって「活かす」ことで異人館街の魅力を新しい生活に結びつけ、観光と日常が交差する新しい価値を生み出している好事例です。

ボーナストラック(下北沢・東京都世田谷区)
〈残した価値〉:コミュニティ・社会的なつながり
下北沢といえば、東京23区の中でも特に文化的多様性が息づくまちです。ボーナストラックはそんな下北沢の住宅地の中に生まれた商店街。
この再開発のポイントとしてあげられるのが「小商い」「住民自治」の2つ。小規模な兼用住宅の区画を多く設けることで個人出店のハードルを下げ、まちの個性を支える大きな「小商い」を創出。さらには計画段階から入居者が参加、改変を加えやすい設えを施すことで、「入居者自身がこの場を育てる」という自治体制の強化を図っています。
SAKUMACHI商店街(愛知県名古屋市)
〈残した価値〉:景観・記憶、 コミュニティ・社会的なつながり
名鉄瀬戸線「尼ヶ坂」駅から「清水」駅間の高架下開発です。既存のまちなみと調和するよう、住宅スケールのシンプルな家型店舗を連ね、高架下でありながら「住宅街の路地」のような親しみやすい風景を創出しています。
周辺の桜並木を活かしつつ、建物には大きな開口や彩り豊かな外壁を採用することで、かつての薄暗いイメージを払拭し、明るく安心感のある空間へと再生。また完成後も開発者が運営に関わり続けることで、地域住民の日常的な利用と持続的な賑わいを生み出す仕組みが評価されています。

(https://eightdesign.jp/cityplanningworks/sakumachi-amagasaka/)
ポートランド(アメリカ)
〈残した価値〉:土地の成り立ち、コミュニティ空間
高速道路拡張を拒否し、代わりに公共交通と公園を整備した事例は、都市開発における市民主体の意思決定の象徴です。利便性だけでなく環境と暮らしを重視した都市モデルとして世界的に評価されています。

(https://www.env.go.jp/policy/co2ta/content3/page2_1.html)
- 再開発によってにぎわいや経済効果、生活の質の向上が見込まれる
- 再開発の一方で、古いものをただ壊す再開発は地域に混乱をもたらす
- 再開発によって失われがちな価値は「歴史」「コミュニティ」「多様性」「偶発性」
- 歴史や記憶・コミュニティを重視した再開発が、まちの個性や多様性を生む
- 「新しくする」だけでなく「残す」「活かす」がまちを豊かにする
再開発の中で求められるのは、単なる空間の刷新ではなく、そこにある人の営みや交流をどう再現し、次世代へと継承していくかという視点です。「ただ通り過ぎるだけのまち」ではなく、「住み続けるまち」という持続可能性を考える上で、「何を残すか」に向き合うことがまちの未来を豊かにする鍵となります。
常に変化を続けるまちの最先端を見詰めつつ、これまでの歴史・文化を尊重し現在の営みと融合させていきましょう。
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まちづくりの視点を取り入れ、コミュニティの新たな繋がりを創出する。
企画・構成・編集:ぴょん/執筆:西村





